2020年1月5日日曜日

孫子の兵法がなぜ今必要なのか?

 最近書店でまた孫子の兵法に関する本をみるようになってきました。よく、自己啓発本やビジネス書の欄に並んでいたり、中には漫画になっているものもあります。しかし、よくよく考えてみると孫子の兵法が著されたとされるのは今からおよそ2500年前です。そんな昔の本がAIや5G時代に突入すると言われている昨今で必要なのか?と疑問に思う方が大半ではないでしょうか。

 私としては、孫子の兵法を読むことは非常に意味のあることだと思います。その理由は孫子の兵法は、過去に時代を越えて読み返されてきた歴史があるからです。有名なものとして例をあげると、戦国時代にあの武田信玄が旗印として掲げていた「風林火山」です。

武田信玄wikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/

「風林火山」は孫子の兵法の一説に記されています。日本の戦国時代は1400年代後半から1600年の間ですが、そのときすでに2000年の年月がたっているにも関わらず、一軍のスローガンたる軍旗に掲げるほど重用しています。当然、孫子の時代と武田信玄の時代では扱う兵器が違いますし、更に日本と中国で地形も文化も違います。それでも、信玄が軍旗に掲げた理由というのは孫子の戦術や戦略の実用的な部分に惹かれたのではなく、思想や観念的な部分に惹かれたためであると考えます。
 また、もうひとつ例をあげると18-19世紀のプロイセンの軍事学者クラウゼヴィッツは、西欧近代兵学の代表的な人物ですが、その思想は軍事力の正面衝突による多大な犠牲をはらうものでした。

クラウゼヴィッツwikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/

その影響を受けたのが当時の大日本帝国です。当時の日本は急速な近代化のため、プロイセンの考え方を模範としていました。そして、その後の太平洋戦争でアメリカに手痛い敗戦を喫したのは言うに及ばずだと思います。その西洋近代兵学による敗戦も、孫子の兵法を活用すれば違ったのではないかと言った人物がいます。それは、フランスの軍事学者リデルハートです。

リデルハートwikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/

彼が20世紀に記した著書の『戦略論』の巻頭には孫子の兵法の引用が数多く存在します。なんと約2500年もの歳月を越えても尚、重用されていたのです。

 それでは、孫子の兵法とはどういうものなのか。よく勘違いされるのは古い戦術や戦略を駆使し、必勝の戦い方を記している使えないものと考えられているかもしれません。しかし、内容をよくみてみると、要約すれば『あらゆる戦いに負けないための心構え』を記しています。必勝より不敗に重点をおいているのが孫子の兵法です。孫子の生きた紀元前5世紀ごろの中国は春秋時代で群雄割拠の時代でした。まさに弱肉強食の日本の戦国時代のような時代です。そのような時代において、生き残るためにはどうするべきかと必死に考え出来上がったのが、孫子の兵法です。

 コンプライアンスやモラルに関する世間の目が厳しくなる現代において、他者への配慮を欠く行動や言動が問題視されており、協調性の必要性が叫ばれてはいますが、その一方で資本主義国家である日本において他者との競争が無くなるはずがありません。むしろ企業間で言えば世の中の移り変わりの速さから、生き残りをかけた競争は激しさを増しています。そんな現代だからこそ、負けない哲学としての孫子の兵法が必要なのではないかと私は考えます。それでは次回から孫子の兵法の詳しい内容に入りたいと思いますので、読みたいと思う方は是非ご覧ください。

参考文献:『孫子』浅野裕一
https://www.amazon.co.jp/

0 件のコメント:

コメントを投稿