2018年5月13日日曜日

孔子伝 最終章 中編

  『壮年期 大司寇まで』

大司冠時代の孔子

 陽虎を討伐した孔丘はその功績で大司空に任ぜられ、益々王宮での発言力が増します。そんな折、少正卯も大司馬と呼ばれる軍事の最高職につき、同じく発言力を増していました。
 ある日、斉の国では王妃が亡くなり、国中が悲しみに包まれていました。特に斉の景公は、深い悲しみの中にあり、王妃が腐敗しても埋葬する気配もなく寝床に置き共に眠る日々を過ごしていました。斉の宰相である晏嬰(あんえい)は、王のそんな様子を咎めますが言うことを聞いてもらえず、王妃を生き返らせる祈祷師を呼んで来るから、少し外に出ていてほしいと嘘をつきその内に王妃の亡骸を運びだしました。しかし、その嘘が露呈し、景公の怒りをかって景公は独裁的な、判断を下すようになります。
 斉は国力で魯国を圧倒していましたが、周辺諸国の影響で攻める事ができない状況でした。それにも関わらず、景公は魯国を陥れるために無理な要求をする会盟を開くことにします。晏嬰は諌めますが、聞いてもらえず会盟は始まってしまいます。会盟は斉国内の峡谷で行われ、すぐには脱出不可能な地であり、孔丘は嫌な予感がしていました。景公はまず要求として、魯国と斉国の国境沿いの4国をこちらに譲ってもらえば同盟を結ぶという大胆な提案をします。しかし、そんな要求は飲めるはずがなく、魯国側は断りますが、更に景公は断れば斉国が侵略するという脅しをかけます。話し合いは進むはずはなく、主催の斉国は休憩のためと躍りを披露させますが、女性のなかに女装をした男性を見つけた孔丘は、その男をめしとり、背中に忍ばせた細身の剣を取り上げ、「これはなんだ!」と斉国側を、糾弾し斉国側はシラを切り通そうとしたのですが、孔丘は無礼者の始末は礼にならい、そちらの方でするべきだと凄み、斉国は仕方なく処罰をさせます。更に、孔丘は周辺に忍ばせていた自軍の伏兵2千で辺りを囲みます。驚く斉国側に対して、孔丘が言います。「それでは、魯国側の要求を言います。50年前に斉国により奪われた2つの町を返してほしい」と。先程の刺客による魯王(定公)と孔丘の暗殺失敗により立場を失ったばかりか、回りを魯の兵に囲まれた斉国側は提案を呑むしかなく、魯国側の外交的な勝利でこの会盟は終わります。国内へ帰った魯国側の一行は、孔丘の見事な対応を褒め称え、国の最高裁判官である大司寇に任じます。

  『壮年期 魯国出奔まで』


 ある日、子路と冉有と子貢は兵の訓練後に、自分の資金で酒を買い兵をもてなしました。それを聞いた孔丘は、兵の私物化が魯の国力の衰退をまねいたからと、その三人を厳しく咎め、精強に育て上げた兵達を大司馬の少正卯に引き渡すように言います。子路たちは反対しましたが、孔丘の意思は固く、兵権は少正卯のものになりました。
 兵を返すやいなや、少正卯は淑孫氏と孟孫氏と共謀し魯国の都である曲阜(きょくふ)に攻めこみ、定公と孔丘を亡きものにしようと画策します。季孫斯と孔丘はこれに対抗し曲阜を守るのですが、少正卯の軍は5000に対し、孔丘は近衛兵のみの僅か100程の兵しかなく、戦況は圧倒的に不利でした。また、少正卯は100程の兵を曲阜に忍ばせてあり、開戦間もなく、門は破られ定公と孔丘と季孫斯は季孫家の屋敷のなかに逃げます。多くの敵兵に囲まれ、万事休すのところを、遠方地に派遣されていたかつての精鋭を呼び戻し、帰還した子路の戦車部隊が到着し、包囲を解きます。それを見た淑孫氏と孟孫氏は逃げようとしますが、少正卯はまだ戦車部隊が数百来ただけだから勝算はあると解きますが、理解されず一人曲阜に取り残されたところを捕らわれます。そして、謀反を煽ったとされ罪を一身でかぶり処刑されます。季孫斯宛の一冊の竹簡を遺して。
 少正卯がいなくなり、孔丘の唯一の憂いは定公よりも三桓氏の権力が圧倒的に勝っているという事でした。そこで、三桓氏の私兵を魯の軍として参入させることと、三桓氏の領地の城壁を下げる事で権力を定公の元に集約しようと画策します。これには淑孫氏と孟孫氏が猛反発しますが、孔丘は毅然としてこの態度を崩さず、弟子たちもまだ時期尚早だからやめた方がいいと止めますが、孔丘は聞き入れませんでした。間に入っていた季孫斯でしたが、淑孫氏と孟孫氏の讒言に逆らえず、また、少正卯の竹簡にかかれたことが頭から離れませんでした。それは、孔丘は魯の国を自分のものにしようとし、三桓氏を必ず追い出すようになるため、用心しろと言う内容でした。
 そして、季孫斯は今までの恩を仇で返す仕打ちをしてしまいます。魯の国の先代を祭る祭典の進行役に孔丘を指定しておきながら、別の場所で季孫斯を進行役にした祭典を開き、孔丘に恥をかかせます。これに愛想を尽かした孔丘はこれ以上この国にいることの無意味さを悟り、弟子たちと共に魯の国を出ることにしたのです。

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